高齢ドライバーが免許を返納しない理由とは?実際の返納率や免許返納のメリットを紹介!

高齢ドライバーを抱える家族にとって、どうやって本人を説得し免許返納を促すのかは重大かつ切実な問題でしょう。説得するためには、高齢ドライバー本人がどのように考えているのか、まずは知ることが大切です。

高齢ドライバーが免許を返納しない理由や、実際の返納率に関するデータを紹介します。免許返納のメリットなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

高齢ドライバーが免許を返納しない理由

2005年に警察庁が公表したデータ(※1)を元に、高齢ドライバーが運転免許を返納しない理由に迫ります。少し古いものの調査内容が非常に示唆に富んでおり、高齢ドライバーの意識の一端が垣間見られる、とても有益なデータです。

「2005年の調査ではデータが古すぎるのでは?」とお考えの方もいるかもしれません。しかし、この20年で高齢ドライバーの意識に、大きな変化はないようです。

2005年の調査では、免許を返納しない理由の第1位が「まだ普通に運転できるから」で、全体の約73%を占めます。一方、2019年にNEXCO東日本が高齢ドライバーに対して実施した調査では、76.0%の高齢男性ドライバーが「自分の運転に自信あり」と回答(※2)。

運転技術に関するほぼ同じ内容の質問に対して、ほぼ同じ回答がほぼ同じ割合で示されているのです。時代によって運転意識に多少の変化はあるかもしれませんが、傾向としては大差がないことがうかがえます。

以上の前提を元に、2005年の調査結果から、なぜ高齢ドライバーは運転免許を返納しないのか、その理由や心情に迫りましょう。

※1.参照/引用:平成17年警察白書「超高齢化社会への対応」

https://www.npa.go.jp/hakusyo/h17/hakusho/h17/html/G1030000.html

※2.参照:NEXCO東日本「車の運転に関する「三世代」調査」

https://www.e-nexco.co.jp/family_nakusogyakuso/gyakuso-report/

Q:運転免許の返納を考えたことがありますか?

○ない(85.0%)

○たまにある(13.3%)

○よくある(1.8%)

人それぞれ事情は違うはずですが、高齢ドライバー本人は、そもそも免許を返納する気があまりないようです。

Q:免許を返納しない理由は?

○まだ普通に運転できるから(72.8%)

○返納すると交通手段がなくなる、または不便になるから(34.4%)

○運転免許を返納するほど運動能力が低下していないから(30.8%)

「運転に支障をきたすほど能力は衰えていない」と考える高齢ドライバーが多いようです。

Q:運転の目的は?

○買い物のため(28.0%)

○通院のため(20.1%)

○仕事のため(14.6%)

地域差はあるはずですが、自動車は日常生活に欠かせないと考えているようです。

 Q:若いころと比べて変化した点は?

○慎重に運転するようになった(90.2%)

○長時間運転すると疲れやすくなった(67.6%)

○とっさの動作や判断が難しくなった(51.1%)

※割合(%)は「感じる」と「やや感じる」を合算した数値

衰えをある程度は自覚しているものの、「自分は慎重に運転しているから大丈夫」との考えが透けて見えます。

Q:高齢ドライバーから見た他のドライバーのイメージは?

○スピードを出し過ぎている(50.2%)

○車間距離を詰め過ぎている(40.3%)

○無理な追い越しをする(30.5%)

「自分よりも他の(若い)ドライバーの方が危険な運転をしている」と感じているようです。

高齢ドライバーの免許返納率

2021年における75歳以上のドライバーの免許返納率は、4.72%。近年はおおむね、5.0%前後で推移しているようです(※1)。

20人に1人の割合で、免許を返納している計算になります。高齢ドライバーの免許返納は、「現状としてほとんど進んでいない」と捉えることができるでしょう。

※1.参照元:ニッセイ基礎研究所「高齢者の免許返納は2年連続減少」

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71051?pno=2&site=nli

高齢ドライバーが免許返納するメリット

○特典や割引が受けられる

○お金がかからない

○安心感が得られる

高齢ドライバー関連の事故が、ニュースで取り上げられる機会が増えました。特典や割引制度を導入することで、本人に免許返納を促す社会的な取り組みも徐々に増えています。しかし何と言っても、免許返納は金銭的にも精神的にもメリットがある行為なのです。

特典や割引が受けられる

○公共交通機関・タクシー料金の割引や利用券の交付

○コンビニ・スーパー・デパートでの買い物時に配送料の割引

○レストランでの飲食代の割引

○金利特例の適用(「預金金利が高くなる」など)

運転免許証を自主返納した方や更新を受けずに失効した方は、「運転経歴証明書」の交付を受けられます。運転経歴証明書を提示すると、上記のような各種サービスを受けられるケースがあるのです。

こうした特典や割引サービスに参入する民間会社は、年々増えています。ただし、自主返納(運転免許失効)後5年以上経過したり、交通違反などで免許取消し処分を受けたりした方は、運転経歴証明書の交付を受けられません。

お金がかからない

ガソリン代・各種保険料・駐車場代・車検代……。自動車関連の諸経費は、生活を大きく圧迫するはずです。年金生活をされている方なら、なおさらでしょう。免許を返納すれば、こういった出費から解放されます。

安心感が得られる

運転免許を返納すれば、高齢ドライバー本人が「自分が原因となって」重大事故を起こす心配がなくなります。この「安心感」は、ご本人にとってもご家族にとっても、何物にも代えがたいものではないでしょうか。

免許返納後の生活について

「免許を返納すれば、日常生活に支障が出る」

このようにお考えの高齢ドライバーも多いでしょう。

2022年にウェブクルーが公表した調査結果によると、免許を返納した高齢ドライバーの56.7%が、「(多少の支障はあるものの日常生活に)困っていない」と回答しています(※1)。

○家族の送迎(59.1%)

○公共交通機関の利用(61.0%)

○徒歩(43.8%)

※複数回答可

同調査によれば、以上のような手段で代替しているようです。特に首都圏においては、他地域よりもはるかに公共交通機関が発達しています。高齢ドライバーに免許返納を促す際の、有益なデータの一つになるはずです。

※1.参照元:ウェブクルー「運転免許証の返納に関する調査」

https://www.webcrew.co.jp/news/detail/20220603.html

この記事もおススメ

https://asahisoken.jp/koureid-mt/

まとめ

高齢ドライバーの免許返納問題は、高齢ドライバー本人と周囲の人間とでは、捉え方・感覚・賛否などが分かれる問題です。

○衰えをある程度は自覚しているが免許を返納するほどではない

○自分だけは大丈夫(自分が事故を起こすはずはない)

アンケート結果を見る限り、このように考える高齢ドライバーが多いようです。「確証バイアス(自分にとって都合のよい方向に物事を考える心理的な傾向のこと)」が、かかっているのかもしれません。

確証バイアス自体は、人間なら誰しもが持つ心的傾向です。確証バイアスを払拭するためには、本人に関わりのない第三者から見た、客観的なアドバイスが有効でしょう。
あなたの周りの高齢ドライバーが事故の加害者にならないよう、対策を考えてみてはいかがでしょうか。

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